日本生命による中退共への不正加入問題は国税がウキウキしてそう
2014/12/24
中小企業退職金共済、略して中退共。
中小企業が従業員の退職金を積み立てるための、国による制度。
ですね。
昨日、保険会社大手の日本生命が、中小企業へ不正加入や不正受給を勧めていた、というニュースが報道されました。
▶︎日生職員、中小の退職金共済で不正行為(WEB魚拓)
単なる不正というだけでなく、FP試験的にもいい教材となるニュースですので、やわらか解説していきます。
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働いてない人を加入させたり、退職してない人を退職したことにしてた
どんな不正だったかというと、実際には勤務実態がない人なのに、従業員として勤務していることにして、中退共に加入させていたようです。
また、実際には退職してないのに、退職したことにして、中退共から退職金を受給していたりもしたそうです。
なんでこういうことをするのか?
まず中退共の概要を、FP試験的におさらいしておきましょう。
中小企業退職金共済(中退共):従業員の退職金用
・加入対象者 :中小企業・個人事業の従業員(原則全員加入)
・掛金の税法上の扱い:福利厚生費として全額損金(企業)または必要経費(個人事業)
⇒「収入を得るのに必要な費用」という扱い
・掛金の負担 :全額事業主負担(国からの助成有り)
▶︎FP試験マンガ!より
まず掛金が全額損金または必要経費、というのがでかいですね。
仮に勤務実態がない従業員でも、加入させちゃえば、積み立てる掛金分は損金算入できますので、事業主の法人税や所得税の負担を減らせるわけです。
また、掛金の一部に国から助成がありますから、退職してない人でも退職したことにして退職金を受給させてしまえば、国からの助成分お得に退職金を受け取ることができちゃうわけですね。
退職金にはほとんど税金がかからない
さらに、退職金には退職所得控除があり、しかも控除後の2分の1が課税対象になるため、税制上かなり優遇されてます。
退職所得=(退職収入-退職所得控除)×1/2 で計算されますが、退職所得控除額は、勤続年数が20年以下の期間は1年当たり40万円(最低80万円)、20年を超える期間は1年当たり70万円です。
従って、上記の問題文のように、4,000万円の退職金をもらっても、実際の課税対象は4分の1の1,000万円程度になるわけです。
退職金は、通常の長年働いた功労金で、老後のための資金でもあるため、こうした優遇措置が取られているんですね。
ところが、今回のような不正加入・受給の場合、加入時には事業主(法人)に税負担軽減効果+国の助成があり、受給時には従業員にも税負担軽減効果があるため、事業主と従業員は得するものの、国は税金を取りっぱぐれたあげくに助成金も持ってかれてしまうわけです。
この場合の「従業員」は家族の可能性が高い
なお、中退共の退職金は、法人を介さずに直接従業員に支払われます。(文中3.参照)
もともと従業員のための退職金制度なんですから、法人に支払うと、従業員に支払わずに他のことに使ってしまうのを防ぐためです。
また、中退共には、家族であっても、従業員であれば加入可能です。(文中2.参照)
もちろん勤務実態を示す書類は必要ですが、そこで不正をすれば、お父さんが経営する会社が、他社でOLをしている娘を従業員にして、後で退職したことにしちゃえば、会社のお金を税負担を軽減しながら家族に還流させることができるってわけです。
従って、こうした不正は全くの他人である従業員よりも、家族従業員のほうがやりやすいわけです。
他人である従業員に対して、不正をしてまで退職金を積み立てる事業主はあまりいないですからね。
税務署が追徴できそうでウキウキしていそうです
日本生命としては、中退共への加入自体では手数料収入はありませんが、制度自体は中小企業にとってありがたいものであり、知らない事業主に情報提供すれば、重宝がられて別の保険商品販売につなげられるため、不正であっても積極的に勧誘していたようです。
しかし、上記のように、確実に税金が絡んでくる話ですから、税務署としてはこの勧誘に乗っかってしまった企業や個人に追徴課税できる可能性が高く、ウキウキしてるんじゃないかと思います。
世の中には性善説で運用されている制度って結構たくさんあります。
だからといって、積極的に不正するようにけしかけちゃ〜いけません。
こういうのは、「まあ、やろうと思えばこういう悪いこともできちゃうんですけどね。でもバレたら税務署が怖いし、場合によっては警察沙汰だから、やってはダメですよ。」というように、営業トークでのスパイスとして使うぐらいが限度です(笑
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